結婚式でミステリー★

結婚指輪がなくなる。

普通ならありえず、大問題となるはずのできごとが、その結婚式場では頻繁に、否、毎日起こっているのであった。

勿論、はじめは大問題だった。職員総出で探しても一定時間は見つからず、結婚式直前になるとひょっこりあらわれる。お客たる花嫁花婿も、真っ白い衣装とは対照的、顔を真っ赤にして怒っていた。

そんなことが一週間ほど続いただろうか、このままじゃ信用ならない結婚式場として倒産に追い込まれる、と支配人が頭をかかえた頃、相変わらず指輪がなくなった。またか、と職員たちは慣れた態度で謝り倒したのだが、怒るどころか、その日の花嫁はこう言った。

「これは神様のお与えになった愛の試練に違いないわ!」

それ以来、この結婚式場はロマンティストなカップル達に大人気となったのである。

はてさて、人気がでたのはよいのだが……支配人はまたしても頭を抱えた。

指輪が消えてくれるのはこうなれば一行に構わない、けれどもそれを把握出来ないのは問題だ。不審者も見掛けない、職員のいたずらだとしか思えないのだが、全員に聞いてみても該当者がいない、さてはほんとうに愛の試練か……?


支配人は知らないのである。この結婚式場に毎日一定の時間だけ、職員でないものが紛れ込んでいることなど。

それは、隣人。幸運にも結婚式場の隣人となったものたちである。

彼等は結婚を控えており、今は指輪選びの真っ最中。シンプルで美しく、彼女の指に映えるものを。彼等は研究したかった。

そこで彼等は結婚式場に忍び込むことにした、職員の衣装はすぐに手に入った、敷地に入るのは自分達の家の柵を壊せばよいだけだった、かの結婚式場の職員は、コック以外オールマイティ、細かな業務分けなどなされていない、そのうえバイトもころころかわる、考えていたより数倍、簡単な作業だった。


そうして「愛の試練」は起こっている。皆さんは、なにゆえこのような馬鹿げたことが成立するのかとお思いだろう。

それはすべて「結婚」のもつ魔力。これからそのせいで酷いめにあうというのに、人々を浮かれさせ、自分を見失わせる。

それこそがミステリーだと思わないか?





「結婚式でミステリー★」というお題で書きました。 新境地なのでうpしてみる←











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