ソノモノ〜2010〜

 

道端にぽつんと

転がるモノひとつ

何気なく

そこに転がっていた

そう

それはとても何気なく



私が触れた

ソノモノの表面は

なんともいえない質感で

どこが前で

どこが後ろか

なんなのだろうか

ソノモノは

丸いのかもしれない

たぶんソノモノは



そんななか

ソノモノ少し動いたか

いやいやヒトがつまづいたのか

その瞬間に

ソノモノ少し大きくなった

いやいや単なる気のせいか



いやいや違った

そんな行動くり返し

ソノモノどんどん大きくなった

目の錯覚ではないらしい



むくむくと

ソノモノは

大きくなった

元の姿を忘れてしまう

あっという間だった



ふと見ると

ソノモノの下には

皆同じく倒れたヒト

こけてしまったヒト

ヒトヒトヒト

やがてそのヒトたちも見えなくなった



ソノモノが飲み込んでゆく

そう見えた

ソノモノが音も無く

ヒトを吸い込んでいるのか

はたまた包み込んでいるのか

ソノモノは

私にわかることはないけれど



時間がいくら経っただろう

どれだけのヒトがうずまっただろう

そんなことはどうでもいいだろう

とっくに私の目には

ソノモノの大きさなんて写らない



そのままソノモノ

道端飛び越え溢れ出し

ヒトをヒトを

絡めてとって

ソノモノそのまま



遂にソノモノ

動くのをやめた

どっしり居座った

時間の流れを弾いたように

ソノモノいるだけ

大きくなっていただけ

からからとからからと



ソノモノの果てから何か来た

なんだろう

きらきらと

さらさらと

見える感じる聞こえる

のに

いつまでたっても

カタチが見えない

しゃんしゃんないてる

カタチが見えない



続いていたそのままが壊れた

その瞬間には

何かが大きく聞こえた

ソノモノもないていた

真っ青に気付いたときには

それらは消え失せていた



残ったのは私ひとりと

コンコンと鳴る空気だけ

もしかしたら

向こうにはヒトが見えたかもしれない



ソノモノがいなくなった道は

なんだかとても狭かった

愉快なほどに

元の道が続いている



さて

またソノモノに会うのは

いつになるだろうか

そう

長く待つ必要はない

そのことだけはわかっている

そのことだけは

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