「なぁなぁ、『青春』ってさ、青い春?」 いつも通り机くっつけていつものメンツで昼飯を食ってると、急にマツがそんなことを言い出した。 「それがどうした?」 「いや……なんか――まずそうだなって思って」 マツの予想外な言葉にオレら全員唖然とする。カノなんて、マツのあまりにもアホすぎるその感想に手に持ってたカレーパンをぼとっと床に落としていた。 けれどマツはそんなこと気にせず口をもごもごさせながらのうのうと続ける。 つか、飲み込んでから喋れよ、とか思ったのは俺だけじゃないと思う。 「だってよぉ、青って熟してねぇじゃん。まずそうじゃね?」 「………」 「あほだな」 「そうだねえ、アホだねぇ。つか……バカ?」 「ばーか」 「つか食い意地張りすぎ」 「一回死ね」 「ちょっ、死ねはねーだろがっ!」 「いや、お前は死ぬべきだ。人類のために」 「スケールでけっ?!!! え? 俺ってそんな重要キャラ?!」 「ちなみに死因は、テストで赤点とって心臓麻痺」 「しかもありえそうな死因?!! つーか、人に死ねって言っちゃいけないんだぞ?!」 「マツは例外だから安心しろ」 オレがそういうとマツ以外のやつら全員がうんうんとうなずいた。 「でも言われてみれば青春って確かにおかしいよね〜」 テンプレートに部屋の隅で体育座りして「のの字」を書いてるマツなど完璧スルーをして、ミケが苦笑した。それに答えるように、ハンは鼻で笑う。 「ま、オレら餓鬼だし? 未熟って意味じゃあ青ってのはあってるだろ」 そりゃそうだ、とその言葉にオレらは意味も無く笑う。 これで飲んでるものがコーヒーとかならかっこいいんだけど、イチゴ牛乳じゃあなんか格好ついてないんだよな、ハンのやつ。 絶対口には出さないけど。 だって怒るから。普段もキレキャラだけど、アイツ怒るとマジで怖ぇの。 でもま、ハンのいうことは確かに正しい。オレらは餓鬼だから、だからこそ馬鹿やって笑いあって。それがオレらの青春なのだろう。側から見たら、笑えねぇほどダサいのかもしれねぇ。青春なんてとてもじゃないが言える代物じゃないにしても――オレらにとっちゃあ、これが青春なのだ。他の青春なんて知らないし、欲しいとは思わない。 ……もしかしたら将来欲しがるかもしれないけど。 でも、今はこれでいい。今はこれがいいのだ。 けどいつか、何でも終わりというものがあるようにこの青い春が終わって、赤やら緑やら、それぞれ別の色の春に移り変わるときがくる。いやもしかしたら、夏やら秋やら冬やら別の季節にそれぞれ移り変わるのかもしれない。けど、そのときもこうやって、こいつらと笑っていられたら……それは最高に幸せなのかもしれない。 ――……なーんてオレは柄でもないことをパンを食いながら考えていた。 そんなある日の昼下がり。 こんなこと考えられるのも、まだまだオレが未熟な青い春だからだろう。 |