G

 

そう、私が私の生命を初めて自覚した場所はどこだったかなと考えたとき、思いつくのは真っ暗な闇でした。

そこに兄弟たちが必死になって本能にすがり、生きていくようでした。だから私もただ、そうか、生きていくのだ、と思い始めたのです。

全ての始まりが其処からで、始まりからまさに底だったのです。

毎日罵声と悲鳴の嵐でした。私の一家は何時も追いやられるように生活させられる。生きていくうえで必要な物を持つ術もなく、夜に人の家に盗みに入りに行くのです。

日増しに減っていく兄弟の亡骸さえ拝めず、気がつけば私を産み落としてくれた母親も死んでいました。幸い、私は母親の一番下の両足を見つけることができましたから、それにすがりついて泣きました。

それから、ただひたすらに「ありがとう」と。

それからしばらく、私は誰に殺されることもなく、めでたく家族ももてるようになりました。

そういう幸せがもっと続けばよかったのですが。

夫が言いました。この家はもう駄目だ。完全に出られなくなってしまった。

しょうがありません。私は諦めました。まだ幼い子供たちだけでも、とは思いましたがこの子たちも助かりようが無いでしょう。そう言うと、夫は笑いだしました。

私たち夫婦は幼い子を守るように抱きしめながらそのときが来るのを待ちました。

そして、とうとう来ました。

奥から白い煙が襲ってきました。この毒ガスを吸ってしまえば、私たちはもうおしまいです。

きっと、生きられない。このまま死に行く運命でしょう。しかし家族が一緒です。

だから、最期に。

「愛しています」

夫も短く、「ああ」と言い、子供たちも「大好きだよ」と言ってくれました。

・・・まあ、Gにしてはいい時間を過ごせたのでしょう。私は。


そうして、全ての走馬灯が走り去った、今、私は、生命のゴールを迎えたのでした。










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